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『真理子という名前』

作者: 蔭翁

作品紹介


『真理子という名前』

白石宗一郎――筆名・桐原蒼。
かつて恋愛小説『真理子』で時代を変えた作家は、今は海辺の老人ホームで静かに暮らしている。

若き日、北の街で出版の仕事をしていた宗一郎は、夢を追って退職し、放浪の旅に出た。
その途中で訪れた海辺の町で出会ったのが、一人の女性だった。
短くも鮮烈な恋。
しかし別れの理由も告げられぬまま、彼女は去っていった。

やがて宗一郎は、その思い出をもとに小説『真理子』を書き上げる。
作品は大ヒットし、映画化やドラマ化の依頼が殺到する。
だが彼は頑なに断り続けた――「あの作品だけは、現実の彼女のままでいてほしい」からだった。

数十年後。
孤独な老境に差しかかった宗一郎は、ついに映画化を許可する。
そしてオーディションで出会った一人の若い女優に、どこか懐かしい面影を見つける。

映画の撮影が進む中、老作家は再び“あの名”を思い出し、胸の奥に眠る記憶と向き合っていく。
失われた時を越えて、彼は“もう一度、彼女に会いたい”という想いを胸に、最後の筆を取る。

その原稿のタイトルには、静かにこう記されていた。

――『再会』。


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