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失恋タクシー
掲載: ノベルアップ+
作品紹介
深夜二時。湿ったアスファルトが街灯を反射して、毒々しく光っている。 ミオは環七の歩道に立ち尽くしていた。右手の掌には、さっきまで誰かの生活の一部だった合鍵が、体温を吸ってじっとりと熱い。三年の月日が「もう無理なんだ」という、たった七文字に圧縮されて放り出された。 マスカラは涙で溶け出し、頬には黒い筋ができている。ストッキングの伝線は、彼女の自尊心の破れそのものに見えた。 そこへ、音もなく一台のタクシーが滑り込んできた。 車種は古いセダンだが、塗装は見たこともないような深い紺色。行灯には「失恋」と、手書きのようなフォントで書かれている。 ドアがパカリと開いた。 「お疲れ様。重そうですね、その鍵」 運転席から声をかけてきたのは、リカだった。 ゆるく波打つ髪を適当に束ね、オーバーサイズの制服を着崩している。彼女はミオの顔も見ずに、ルームミラー越しにミントタブレットを一粒噛み砕いた。 ミオは吸い込まれるように後部座席に座った。車内は、紙の本の匂いと、少しの柔軟剤の香りが漂っている。 「……どこへ行くんですか。行き先、言ってないけど」 「うちのメーターは心拍数連動型なんです。あなたのバクバクが収
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更新情報
- 2026/01/31 2026年1月31日更新
