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悦びの謳

作者: 白濁ノ宵

作品紹介

”彼”が現れると、すべてが狂うの。

“平民”のくせに、整いすぎた顔。
“下級士族”のはずなのに、背筋の通った静かな佇まい。

名前は――松本陽翔。

最初は、虫唾が走った。
見ているだけで、胸がざわつくなんて不快以外の何物でもなかった。
私は有栖川家の長女。誰にだって指一本触れさせたことなどない。

なのに、あいつは笑わない。媚びない。私の顔を見ても、目すら逸らさない。

……違うのよ。
そうじゃない。
あの目が欲しいの。私を見て、欲情して、舐めるように見て、貪るように愛してほしいのに……。

なのに、あの子ったら――

まるで「食べ物」みたいに、私を見ない。
どんな高級弁当を渡しても、感謝すらしない。
私が選んだ料理を、ただ「口に入れるもの」として咀嚼して、それで終わり。

……違うの。そうじゃないのよ。
私は「食べさせたい」の。
“食べさせたい”けど、“食べられたい”の。
私の中を、指を、舌を、喉奥を、全部――彼に、貪ってほしいのに……。

だけど言えない。
そんな下品な本音、令嬢として吐いてはいけない。
だから私は、見えないところで、お弁当箱にキスをして、
陽翔くんの使った箸を

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