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対岸の森、魔女の家

作者: 伊藤暗号

作品紹介

プロローグ


「全然暇にならないじゃん!?」

 連続15連勤明けで、やっと家にたどり着いたばかりだと言うのに、風で撒き散らされた書類の山に、薬師のルリィ・オミナイは奇声をあげたい衝動をなんとか抑え、埒もない愚痴をこぼすだけに止めた。

「だからさっさとあんなヤツらなんざ見捨てて、好きな事だけして過ごそうって言ってるじゃ無いか」

 銀の鬣をキラキラとなびかせ、目を細めて風を全身に受けながら、散らばった書類は一瞥もせずに、ゲッコウがいつもの悪態をついた。

 久しぶりの帰宅で、家中の窓を全開にしたのがまずかった。
 ルリィは渋々腰を曲げ床に向かって手を伸ばす。

「ゲッコウったら。白い壁に『堕天使』って書きたくなるような事言わないでよ。ねえニコ」

「何それ? まったく。こんなんじゃ何のための《魔女の家》なのかわからないわ」

 ルリィの訳のわからない返答に、ここにきたら思う存分、このベルベットのような美しい毛並みをすいてくれると思っていたのに。と、ニコがペロペロと自分で毛繕いをしながら続けて文句を言う。
 そしてふたりそろってお決まりの呪文を唱えるのだ。

「「毎日美味しいものをた

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