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秋波楓の語ることには。

作者: 和音

作品紹介

*未完だった過去作の再投稿です。とりあえず完結目標。
よろしければお楽しみください。 

  近辺の中心街とはいえ、終電間際の電車内に人はまばらで、彼女、秋波楓(あきなみかえで)は楽になる座席に背を預けることができた。
 これが通勤通学ラッシュ時の朝方ではこうもいかず、すし詰め状態の車内で大事なギターの弦のチューニングやらネックへの影響やらを心配しながら過ごすことになるのだが、もう深夜零時を過ぎた終電の車内は閑散としており、苦も無く座席に座ることができた。
 楓は座席にもたれながら、窓の外に視線をなんとはなしに向けた。
 そこには光の加減で、窓ガラスが鏡のようになり、バンドのライブ終わりでくたびれて少し眠そうなように見える表情の自分の顔が映っていた。
 思わず、深く溜息をつき、視線をかかえるようにして持つギターケースに向け、楓はギターケースをうつむくように抱きしめた。
 疲労感に任せて、重くなっていた瞼を閉じて目をつむる。今日が終わる。何も今の自分を変えられずに。
 瞼を閉じたことにより、視界の情報は閉ざされて、ただただ静かな真夜中の世界を電車が線路―決められたレールを走る音がする。

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