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君の耳は、もう要らない

作者: 老羽十勇

作品紹介

母を奪った宗教に、私は入信した。
神を信じるふりをして、神を殺しに行く。
多種族と魔法が共存する世界。差別、魔力暴走、貧困——あらゆる悲劇の原因が「違い」にあるこの世界で、一つの宗教が静かに、しかし急速に支持を広げている。
その名は、しあわせの聖光団。
彼らの教義はただ一つ。
「差異を捨てれば、人は幸福になれる」。
白い施設は清潔で、やさしく、誰も怒鳴らない。
居場所を持てなかった者、傷ついてきた者、疲れ果てた者を、信徒たちは本物のやさしさで迎え入れる。
耳を持つ者は耳を差し出し、角を持つ者は角を差し出し、翼を持つ者は翼を差し出す。
違いを失うことで、人は苦しみから解放されると信じて。
そして切られた者は、礼を言う。
獣人の少女ルゥ=イリスは、この宗教に母を奪われた。
彼女の武器は剣でも魔法でもない——人の本音を聞きすぎてしまう耳だ。
その耳で、ルゥは知ってしまった。
信徒たちに悪意はない。白衣の手はやさしい。居場所は本物で、救いも本物だ。
ただその先に、深夜の地下が続いているだけで。
この宗教に、悪人はひとりもいない。
だから、壊せない。

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