このサイトについて

複数のWeb小説の更新をまとめて確認できます。
各小説の「マイリストに追加」を押すとリストに追加されます。

■紹介記事
ネット上で無料で読める小説・ラノベの更新情報がまとめてチェックできる「Web小説アンテナ」 - GIGAZINE
【雑記】Web小説アンテナがオープン - まろでぃの徒然なる雑記
ランキングも追加されたWeb系小説更新情報サイト「Web小説アンテナ」 - TEXT FIELD

新卒エンジニア、観察ノートを開く(上巻) 観察を、始める

作者: どん

作品紹介

「うちは優しい人ばっかりだから」

 配属初日に何度も聞かされたその一言に、桐谷蒼太は、わずかな引っ掛かりを覚えた。

 桐谷蒼太、二十二歳。四方を山に囲まれた人口三十万の盆地・港川市。創業五十五年、社員百一名の中小IT企業、株式会社ヨキエルに、新卒で入社する。配属はチームA。同期は六人、先輩は三人、マネージャーが一人。最終面接で耳にした「三年で土台を作る、それがヨキエルに来る人たちの責任です」という一言が、まだ頭の隅で鳴っている。

 入社初日の朝、蒼太はノートに一行だけ書いた。

——明日から、観察を始める。

 ある先輩は、コードレビューにすぐ「LGTM!」とだけ返してくる。別の先輩は、丁寧に二十二件のコメントを返してくる。どちらも、たぶん、優しさ。ただ、同じ優しさのはずなのに、何かが違う。

 蒼太はノートに観察を書き留めていく。先輩の言葉、マネージャーの機嫌の波、同期六人の語尾の差、月例の社内勉強会で遠野CTOが書いた一語、夏祭りの浴衣、冬の雪、年の暮れの一人の夜。書き続けるうちに、二種類の優しさの輪郭が、少しずつ像を結び始める。

 季節は春から夏、秋を経て、雪の港川市へ。

タグ

更新情報