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異世界で女にされた俺、百合の姫君に囲まれてスール契約を迫られてる件について──依代はまだ名を持たない

作者: うみの

作品紹介

夜、透はひとりで祈祷室に立っていた。

もう誰も演習には使わない台座。
花のない台座。
名前が書かれることもない記録用紙の置き場所。

でもその石の表面に、
透は手のひらをそっと重ねた。

誰の手の形かはわからない。
でも、ここには確かに“たくさんの指先”が触れていた。

「……選ばなかったのに、
 わたしの中には、こんなにたくさん残ってる」

声は出ていたのに、誰にも届かない。

それでも、透の内側には、確かな応答があった。

*

帰り道、環が待っていた。

いつものように、笑っていたけれど、
その笑顔の奥に“終わりを知っている人の顔”があった。

「透くん、名前ってさ、呼ばれないままのほうが残ることってあるよね」

透はうなずいた。

「わたしね、最後まで祈らなかったの。
 祈ったら、制度に刻まれちゃうから」

「でも、触れた。話した。……愛したって、言っていいと思ってる」

環の言葉は冗談のようだった。
でも、透の喉の奥に、その音だけが刺さった。

「だからさ、透くん。わたしのこと、
 忘れたくなったら、また触れて。名前じゃなくて」

そう言

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