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HardLuck un Days

作者: Hellmärc

作品紹介

 彼から借りる本は、シガレットの香りがした――――
  
 ケイトは、不幸な人生を送ってきたわけではない。
 ただ、父は去り、進学はつまずき、信じていた友人は金を残して消えた。どれも致命的ではない。けれど「小さな不運」が積み重なり、彼女の世界は少しずつ曇っていった。
「ついてない」
 それが、彼女の口癖だった。ある日、ケイトは大学構内で胡散臭い青年・クリュウと出会う。
 金髪に青い瞳、軽薄な言葉遣い。彼が差し出したのは、“幸運を感じられる薬”だった。それは幸福を与える薬ではない。不幸が見えなくなるだけの、空色の錠剤。

 疑いながらも飲んだその日、ケイトは気づいてしまう。
 世界は何も変わっていないのに、自分の感じ方だけが変わったことに。
 失敗も、喪失も、苛立ちも、どこか遠くへ流れていく。理由はどうでもいい。ただ「楽」だった。

 薬を飲む理由は、次第に軽くなっていく。
 嫌な客、壊れた家電、朝の気怠さ。そしていつしか、飲んだ理由さえ忘れるようになる。
 薬を売り、傍にいるクリュウは言う。人は幸福を求めているのではない。ただ、不幸から逃げたいだけなのだと。
 不幸を感じなくなることは

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