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クロスベアリング ―二等航海士、異世界の星を読む―
掲載: 小説家になろう
作品紹介
二等航海士・東雲透(しののめ とおる)は二十八歳。極東のコンテナ船社に勤め、深夜十二時から四時のブリッジ当直を六年も繰り返してきた男だ。彼の主な仕事は、海図にいまだ鉛筆で船位を入れること、毎時の風向風速気圧と視程を航海日誌に書き留めること、そして甲板から見えた山や灯台の方位を二点以上同時に測って自船の位置を割り出すこと――いわゆる「クロスベアリング(交差方位法)」と呼ばれる古い技術である。
GPSもECDISも完備された現代において、彼の手書き記録など誰も読まない。本社海務監督の郡司岳人(ぐんじ たけと)は、訪船のたびに鉛筆海図を見つけては薄く笑う。「いつまで石器時代の真似してるんですか、東雲さん。AIが秒で出してくれますよ」。透はうつむき、ただ鉛筆を握り直す。返す言葉は、いつも、喉の手前で止まる。
ある夜、北太平洋の嵐の中。視程ゼロ。波高は六メートルを越える。透がレーダーから目を上げた瞬間、ブリッジの窓いっぱいに、海面ではない場所から立ち昇る光の柱が見えた。次に意識が戻ったとき、彼は知らない天井の下にいた。
「勇者よ、魔王を討て」と言ったのは、銀冠を被った王だった。だが透は、剣を握っ
GPSもECDISも完備された現代において、彼の手書き記録など誰も読まない。本社海務監督の郡司岳人(ぐんじ たけと)は、訪船のたびに鉛筆海図を見つけては薄く笑う。「いつまで石器時代の真似してるんですか、東雲さん。AIが秒で出してくれますよ」。透はうつむき、ただ鉛筆を握り直す。返す言葉は、いつも、喉の手前で止まる。
ある夜、北太平洋の嵐の中。視程ゼロ。波高は六メートルを越える。透がレーダーから目を上げた瞬間、ブリッジの窓いっぱいに、海面ではない場所から立ち昇る光の柱が見えた。次に意識が戻ったとき、彼は知らない天井の下にいた。
「勇者よ、魔王を討て」と言ったのは、銀冠を被った王だった。だが透は、剣を握っ
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更新情報
- 2026/05/17 全22部分
