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戦を止めてきたのは、たった一語。その通辞を追放した王国は、二月で三国を敵に回した

作品紹介

侯爵令嬢レオノーラは、三国の言葉を操る王国唯一の通辞《つうじ》だった。
親書も条約も、彼女の手を通れば角が取れる。原文にない緩衝の一句をそっと織り込み、両国の面子を立てて、十年、戦になりかけた火種を黙って消し続けてきた。
だが婚約者である外務卿の嫡子コンラートは、彼女の仕事を「鸚鵡が異国語をなぞるだけの物真似」と断じ、公衆の面前で婚約を破棄、通辞の職を剥奪する。
後任は、辞書通りの逐語訳しかできない若い書記。彼が訳した親書は、隣国エスタの王へ「謀略」と読まれ、十年保たれた三国の盟約は音を立てて崩れていく。
追放されたレオノーラを唯一その言葉で見抜いたのは、エスタの若き特使テオドリック。彼女の訳文の「呼吸」を、海を越えて信じてきた男だった。
二月後、国境に三国の軍が並ぶ。たった一語の取り違えが戦を呼ぶと、誰もが手遅れになってから気づく。盟約を縫い止めていたのは、辞書ではなく、軽んじられた一人の通辞の指先だった。

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