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シーサイド・ログ

作者: 虎兎

作品紹介

令和8年、7月。
 湘南の海は、かつてのような「灼熱の社交場」というよりは、SNSに最適化された「映える背景」と化していた。
 都内の広告代理店で、クライアントの無理難題に「検討します」という名の逃亡を繰り返していた**浅海 颯(あさみ はやて)**は、30歳を目前にして、突然の無力感に襲われていた。手元には、半年前に別れた彼女との思い出が詰まった、通知の来ないスマートフォン。
 「……バグだよな、これ」
 彼は独りごち、愛車の古いジムニーを走らせた。向かった先は、亡き祖父が遺した三浦半島の端にある古びた海の家兼民宿『シーサイド・ログ』。
 到着した颯を待っていたのは、潮風で剥げかけた看板と、砂浜に座り込んでMacBookを叩く一人の男だった。
 「お、新しいオーナー? 悪いけど、Wi-Fiの調子が最悪なんだわ」
 男は藤原 湊(ふじわら みなと)。大手IT企業をドロップアウトし、フリーのエンジニアと称して各地を転々としている、掴みどころのない自由人だ。
 「勝手に住み着いてるのかよ」
 「家賃の代わりに、このボロ宿のシステム改修を請け負ってる。今のところ、予約システムは『手書きのノー

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