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帰ってきた山本五十六

作品紹介

ブイン島上空、1943年4月18日。
一式陸攻の機内に、彼は静かに腰掛けていた。
機体を貫く銃弾の雨。炎が翼を舐め、急速に高度を失う。
彼は、これが己の最期であることを悟った。

――しかし、落下の衝撃は訪れなかった。

気が付けば、眩しいほどに整備された舗道に立っていた。
四車線の道路を車が縦横に走り抜け、ガラスの壁のような高層ビルが立ち並んでいる。
「……ここは……?」

軍帽を押さえ、呆然と立ち尽くす彼の手元には、皮肉なほどに現金が残されていた。
出撃前、給与として受け取ったばかりの旧日本銀行券である。

ほどなくして彼は、軒先に掲げられた小さな看板を見つけた。
〈日本銀行券取扱店〉
店内に入ると、若い店員が怪訝そうに紙幣を手に取り、首を傾げた。

「……古いですね。ですが、記念価値もあるので等価交換できますよ」

手渡されたのは、色鮮やかな新札だった。樋口一葉、福沢諭吉、野口英世。
山本はしばし見入った後、わずかに口元を緩めた。

「……補給は万全、というわけだな」

こうして彼の、二十一世紀スイーツ巡りの戦いが始まった。

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